ASCOLTO - 音楽をつくることは救いでもある〜渋谷慶一郎インタビューvol.2

ASCOLTO / 音楽をつくることは救いでもある〜渋谷慶一郎インタビューvol.2

ASCOLTO - 音楽をつくることは救いでもある〜渋谷慶一郎インタビューvol.2

(vol.1から続く)

──コンピュータ休止前の最後のツアーとなる、今度のジャパンツアーはどういったものになるでしょうか?

これは完全にコンピュータのみでやります。filmachineを含めた第一期の第三項音楽と、その前にATAKでやってきたことの集大成的なもの、そしてそれを壊すようなものが共存している感じになるんじゃないかなと思っています。

──渋谷さんのほかにはPan sonic(※)、evala、刀根康尚というラインナップですね。Pan sonic、evalaについてはATAKでもおなじみのアーティストですが、刀根さんは面白いことをやっている73歳ということで(笑)。高橋悠治さんもそうですが、渋谷さんはかなり上の世代と仕事をすることが多いですね。(※インタビュー後、Mika Vainioの足の負傷によりPan sonicの来日が中止になり、池田亮司が全公演参加となった)

特に老人好きということはなくて(笑)、単に好き嫌いとかクオリティで選んでいるだけなんですが……まず「自分と違う」ということ、そして「面白い」、それから「世界に代わりはいない」というアーティストじゃないと、一緒に仕事する意味がないというのはありますよね。そうやって選んでいくと、結果的に悠治さんや刀根さんのような世代の人たちは強い。Pan sonicにしたって僕より10歳上だから……若い世代で面白い人に出会いたいとは思っていますが、ただ何となく思うのは、モノを創ることに興味があったり、モノを創りたいというところに、優秀な人材が集まっていないという気がしています。それはアート、音楽問わずですが。

──それはなぜでしょうか。

これは東浩紀さんと対談したときに彼が言っていたことですが、「アーキテクチュア」という言葉が流行っていることでわかるように、作品を創るというよりも、作品を創るためのシステムを作るという方向に注目が集まっていますよね。でも、僕にとってはそのふたつは、近いようで全然近くないんです。僕は人が作品を創るためのシステムを作ることにまったく興味がなくて、自分が作品を創ることにしか興味がないから、絶滅種なんじゃないかと思いますけど(笑)。これは日本だけの現象ではなくて、ヨーロッパでもそんなに興味深いアーティストは出てきていないですから。もしそういうアーティストがいたら一緒にやりたいっていう気持ちはすごくありますが、現状、具体的にはあまり知らないです。

──そんななかで、Mika Vainio(Pan sonic)やi8u+Tomas Phillipsをリリースされましたが、彼らはどこが違ったんでしょうか。

まずMika Vainioですが、彼は音楽のことしか考えないような人で、驚異的に耳が良いんですね。今回出た『ATAK012 OLEVA Ø Mika Vainio 』というアルバムは、彼が3年ぐらいかけて作って、Sahkoというヨーロッパの小さいレーベルから出したソロアルバムですが、ATAKから日本盤を出してほしいって相談されたんです。そのときに、日本盤用にボーナストラックを作ってほしいと言ったら、アルバムとして完全に完成しているから、ボーナストラックが入る余地はないって言われたんですね。ただ、それからしばらくして6月にmariaのことがあったときに、彼から突然「Hikari」って書いてあるCDRが送られてきて、これがけっこう長い曲で、これをボーナストラックに入れてくれって言うんです。あきらかにmariaのための曲だなって一聴してわかったんだけど、mariaがどうとかって一切言わないんですよね。

EUツアーのベルリンでのライブで久しぶりに会ったときも、ライブ前はほとんど喋らないんですよ。「今日の進行は?」とか事務的なことだけで(笑)。いつもそうなんだけど、もうちょっと何か言うことないのかな? という(笑)。で、僕のライブが終わってステージを降りたら、満面の笑みで近寄ってきて……なにも言わないんだけど、内容が気に入ったことはすぐにわかるんですね。Next

音楽を作るということは、ひとつの救いでもある〜渋谷慶一郎インタビューvol.2

音楽をつくることは救いでもある〜渋谷慶一郎インタビューvol.1
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update : 2009.04.17
title : 渋谷慶一郎


text : VAGANCE
photo : kensyu shintsubo
thanks : ATAK
thanks : KiKi inc.

keiichiro shibuya

渋谷慶一郎(音楽家)

02年「ATAK」設立。先鋭的電子音響のCDリリースをはじめ、多様なクリエーターを擁したマルチプラットフォームとして活動。04年のソロアルバム「ATAK000 keiichiroshibuya」で評価を決定づける。池上高志と非線形物理学の応用による第三項音楽を提唱し、06年三次元立体音響作品「filmachine」をYCAMで滞在制作・公開、その後08年ベルリンで発表。07年アルスエレクトロニカ/デジタルミュージック部門Honorary mention受賞。09年ピアノソロによるソロアルバムを発表予定。


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