GUARDO - 段ボール製家具で『スケッチ・オブ・フランク・ゲーリー』を予習する

GUARDO / 段ボール製家具で『スケッチ・オブ・フランク・ゲーリー』を予習する

GUARDO - 段ボール製家具で『スケッチ・オブ・フランク・ゲーリー』を予習する

 初夏、Bunkamura ル・シネマほかにて公開予定の映画『スケッチ・オブ・フランク・ゲーリー』は、その名のとおり建築家のフランク・O・ゲーリーを追うドキュメンタリーフィルムである。

 フランク・O・ゲーリーといえばいまやオランダのレム・コールハースと並んで、世界で最も忙しい建築家といえるだろう。“脱構築主義”と呼ばれるゲーリーの建築は、まるで巨大なオブジェのように都市のなかに紛れ込み、強烈な個性と存在感を放っている。
 もはや「architecture」と呼べるのかどうかも疑わしいゲーリーの建築であるが、スケッチから始まるその設計手法は驚くほど精密である。映画のなかでも自らのスケッチをもとに作られたスタディ模型を前に、スタッフとの度重なるエスキースを行うゲーリーの様子が映し出されるが、なんといってもその後のテクニカルスタッフによるモデリング・構造解析ソフトによる3次元パースの制作が圧巻だ。

 ゲーリーはこの3次元パース制作ソフトを自由に操ることによって、どんなに複雑な造形も構造的に解決できるようになったのだが、彼の自由な表現はすでに30年以上も前から建築のみならず、家具の世界でも発揮されていた。そこで今回、フランク・O・ゲーリーが成し遂げた家具の世界での偉業を追うことで『スケッチ・オブ・フランク・ゲーリー』を少し予習してみようと思う。


 1960年代より、従来の高価な家具に対し、安価な代替材料として「紙」に着目したデザイナーは存在していたが、「耐荷重」という構造的な問題をクリアすることができず、紙製の家具に挑戦するデザイナーは徐々に姿を消していく。そんななか、1972年に建築家のフランク・O・ゲーリーが段ボールを用い、規則正しい直線のシルエットを特徴とする家具のコレクション「Easy Edges」を発表し、世界に衝撃を与えた。

 「一般の家庭にも手の届く価格帯の家具を作りたい」と考えていたゲーリーは、たまたまアトリエの外に捨てられていた模型用の段ボールを見て「これが使えるんじゃないか」とひらめく。段ボールを直線的に貼り合わせることによって強度を保ち、外からは見えない構造補強のためのスティールロッドと、側面のファイバーボードで耐荷重をさらに強化した「Easy Edges」シリーズは、紙の素材ということで、従来の椅子にはない独特なクッション性が体感でき、そしてなんといってもフランク・O・ゲーリーの建築同様、型にはまらない自由な造形が特徴である。

 こうして商業的にも大成功をおさめたゲーリーの段ボール製家具「Easy Edges」シリーズではあったが、コレクターのためのアートピースのような存在となり、結果的には高額で取引されてしまう。本来の目的であった「安価な家具」から遠くかけ離れてしまったことにゲーリーは悩み、突然このシリーズの椅子販売と家具デザインを止めてしまう。

 その後、実験的な試みとして1986年に「Experimental Edges」という段ボール製家具コレクションをゲーリーは発表する。なかでもクラシックアームチェアをモチーフとしてデザインされた椅子「Little Beaver」は、その丸みを帯びた形が座り心地のよさを保護し、すりきれたようなエッジは古い家具を表現した、遊び心のあるデザインとして注目された。

 2005年にスイスのvitra社はゲーリーの「Easy Edges」シリーズからLow Table Set&Block、Wiggle Side Chair&Side Chairを再発表し、本来の目的であった「安価」を実現した。また、「Experimental Edges」シリーズからは、Little Beaverの色を鮮やかな赤に塗り替えたRed Beaverを発表。ゲーリー家具に触れる機会がぐっと近づいた。


 なお、Bunkamura ル・シネマでは『スケッチ・オブ・フランク・ゲーリー』上映期間中にゲーリーの段ボール製家具のなかから数点を、原物とミニチュアで劇場展示する予定だ。また、ゲーリーの家具を扱っているhhstyle.com原宿本店では5月10日から6月21日まで 、『フランク・O・ゲーリー』企画展示を行う予定。


Sketches of Frank Gehry『スケッチ・オブ・フランク・ゲーリー』
Sketches of Frank Gehry

監督:シドニー・ポラック
出演:フランク・ゲーリー、デニス・ホッパー、ジュリアン・シュナーベル他
2005年/ドイツ・アメリカ映画/上映時間=84分/カラー
2007年6月2日、Bunkamuraル・シネマほかにて公開

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