GUARDO - 映画『コマンダンテ』に指導者の愛すべき本性をみる

GUARDO / 映画『コマンダンテ』に指導者の愛すべき本性をみる

GUARDO - 映画『コマンダンテ』に指導者の愛すべき本性をみる

 「このハリウッド映画は何億ドルかかっていて、CGも凄いんですよ」と言われたら、「へぇ〜」とは答えるものの、正直なところ脳が麻痺してしまっていて、昔ほど驚かなくなってしまっている。人間とは贅沢な生き物である。

 そうかと思えば、ニュース番組の特集などで流れるホームビデオで撮られた北朝鮮のドキュメンタリーには食いついて観てしまう。そこに描かれているのは“実在する未知の国”。おそらく、いくらCGが発達しても、いくらお金をかけても、得ることのできないドキュメンタリーの力がそこにあるのかもしれない。そういった意味で『コマンダンテ』は“実在する未知の人”の映画である。その“実在する未知の人”とは、いまだ国内で8割以上の支持率を誇る伝説のキューバ最高指導者──フィデル・カストロである。

 そんな“実在する未知の人”に対し、『プラトーン』、『JFK』、『ワールドトレードセンター』で知られるオリバー・ストーン監督が30時間以上かけてインタビューを行った。そこには“実在する未知の国”を創り上げた未知なる指導者の様々な表情が映し出されている。いったい彼は何を考えて国をここまで引っ張ってきたのか。

 キューバ危機で感じた通訳の怖さ、ケネディ暗殺についての細かい分析など、世界史上に残る事件に関する彼の発言には重みがある……ものの、重い内容のインタビューばかりが続くと、僕のような歴史や政治に疎い人間には正直なところ少々ツライ。しかし、オリバー・ストーン監督はこの未知なる指導者に、中絶合法の意図、売春婦の大卒度、同性愛、バイアグラなど“性”についての話題や、フィデル自身の恋愛遍歴、父親としての自己評価、ついには神を信じる? 信じない? といったところまで語らせてしまったため、映画自体に窮屈さや違和感を抱くことはなかった。

 そんななか、一瞬だけ映し出されるフィデルが履いているナイキの靴や、『タイタニック』は大画面で観るべき映画だと賞賛する彼の姿を見ていると、何故か微笑んでしまう。頑固一徹の堅苦しい革命家ではなく、頑固だけれど少しお茶目な革命家としての素顔がちらほら見えてくる。そんなフィデルのことがキューバ国民は大好きで、だからこそここまで長期政権を維持し、どこへ行っても大スターがやってきたように、若者にすぐに囲まれてしまうのだろう。

映画『コマンダンテ』に指導者の愛すべき本性をみる

 お茶目な彼を象徴する場面がある。オリバー・ストーン監督と一緒に車に乗り込み、葉巻について語るシーンだ。日本でもブームになりつつある葉巻は、言うまでもなくキューバを支える産業のひとつである。そんな大事な役割を担う葉巻について、

 「葉巻は健康のためにやめたんだ」

 と、あっさり言ってのける。そこには最高指導者の「フィデル」ではなく、ひとりの老人としての「フィデル」が映し出されている。少し大袈裟かもしれないが、ブッシュ大統領が「狂牛病になっちゃうから、僕はステーキ食べるのをやめたんだよね」と言うようなものである。そんなお茶目なフィデルだからこそ、ふとした際に発する言葉にハッとさせられることもあるのだ。

 「人が作り上げたものは信じない」

 宗教に関するコメントだったのだが、ここには様々な思いが含まれている気がしてならないのは僕だけだろうか。ちなみにこの『コマンダンテ』、アメリカ本国では公開が禁止されている。(イシコ)


COMANDANTE『コマンダンテ』
COMANDANTE

監督:オリバー・ストーン
出演:フィデル・カストロ、オリバー・ストーン
2003年/アメリカ・スペイン合作/上映時間=100分/カラー
(c) 2003- Mediaproduccion S.L. 2002. All rights reserved.

2007年5月26日、ユーロスペースにて革命的ロードショー

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update : 2007.05.31
title : 『コマンダンテ』


text : ishiko
photo : alcine terran


ishiko

イシコ

ホワイトマン代表。静岡大学理学部数学科卒業後、女性ファッション誌編集長、Webマガジン編集長を経て、現在は(有)ホワイトマンプロジェクト代表。 ホワイトマンとは国内国外問わず、イシコの友達が白塗りをして、ショー、映像、本、プロダクトなどを5年間限定で産み出して、遊ぶプロジェクト。散歩の達人の連載コラムなどコラムニストやブロガーとしても注目されている。

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