


「我が城を建てよ」──総工費1000億円、のべ100万人の人員を投入、総工期間はわずか3年。織田信長からオーダーされた大城郭の計画は、安土の山をひとつまるごと城にするという壮大なものだった。偉業に挑むのは天才宮大工・岡部又右衛門。
430年前に建設された織田信長による天下一の城・安土城は当時世界一の木造建築といわれ、後世に多大な影響を与えることとなった。この未知なる創造に立ち向かうため、岡部又右衛門がその技術・知識・経験のすべてと、職人としての自信と勇気をもって、ときに施主である織田信長と対立し、家族と門下の仲間の支えでこの難題を解いていく様を綴った第11回松本清張賞受賞作品『火天の城』(山本兼一著・文藝春秋刊)原作の映画『火天の城』が9月12日より公開される。
VAGANCEでは今回「男は城!」と題し、建築批評家・五十嵐太郎氏と選書家・幅允孝氏のトークイベントを開催した。

幅:こんばんは。今日はよろしくお願いします。城はあまり詳しくないんですが(笑)。
五十嵐:こんばんは。僕も日本建築史の専門ではないので、建築と城のことをどこまで語れるかわかりませんが、よろしくお願いします。
──まず、映画を観て印象に残ったことを教えていただけますか?
幅:2時間20分と長い映画ですが、重々しくなく、サラっと観れました。山本兼一さんの原作もそうですが、よくこの題材で小説が1本書けて、映画が1本撮れたもんだと。城という視点で時代を掬い取ったところと、さらにそれを映画化しようとした気概に感心しました。「よくこれを映画化したなあ」と。
具体的な映画の見どころは、岡部又右衛門という愛知県熱田の田舎大工と、中井孫太夫という東大寺大仏殿を造った奈良の中井一門、いわゆる名門といわれている職人ですね。あともうひとり、池上五郎右衛門という金閣寺を造った京の宮大工の3名で安土城築城のコンペティションをやるんです。このコンペティションのシーンが、僕はとても盛り上がりましたね。みんなプレゼン上手なんですよね(笑)。屏風に立面図を描いたものがドーンと出てきて、それからその屏風がバッと左右に割れて、なかから断面図が出てくる。その屏風がまたバッと外されると模型が出てきて(笑)、そのプレゼンテーションだけでも面白いのに、さらにそのプレゼンを受けて、なぜ信長が又右衛門の案を選んだのか……「おー、なるほど!」ってニヤッとしちゃいましたね。僕はそこの部分がとても好きでした。
五十嵐:僕もまったく同じシーンでしたね。コンペのシーンが圧倒的に面白かったです。その話はまた後でしますけれども、僕は基本的に時代小説を読まないんですが、今回は映画を観る前に原作を読んだんですね。そうしたら原作と映画の内容がけっこう違っていて、「ここをこういう風に変えているんだ」って観るのも面白かったですね。あと、戦国時代を題材にした映画なのに、戦のシーンを入れないで、棟梁の視点から逆に時代を切り取るっていうのはすごく面白い試みだなと思いました。
そこで思い出したのが、ケン・フォレットの『大聖堂』というイギリスにゴシックの大聖堂を造る長編小説なんですが、時代としてはロマネスクからゴシック様式に変わるターニングポイントで、主人公がフランスで最初のゴシック建築が出来上がるのを目撃して、そのイメージをイギリスに持って帰るという話でして、『火天の城』と同じようにどこから時代を見通すか、というときに大工や棟梁を設定しているのがすごく面白いんですね。![]()
update : 2009.09.11
title : 『火天の城』
text : VAGANCE
thanks : taro igarashi
thanks : yoshitaka haba
thanks : copon norp
五十嵐太郎/建築評論家
東京大学大学院修士課程修了。東北大学准教授。『新宗教と巨大建築』、『終わりの建築/始まりの建築』
、『戦争と建築』
、『現代建築のパースペクティブ』
、『現代建築に関する16章』
、『美しい都市・醜い都市―現代景観論』
ほか、著書多数。近著には『映画的建築/建築的映画』
幅允孝/選書業
選書・選音集団“BACH(バッハ)”代表。青山ブックセンター六本木店、建築・デザイン書のバイヤーを経て、(株)ジェイ・アイ入社。石川次郎氏に編集を学ぶ。その後独立し『BOOK246』など、書店・セレクトショップにおける本のディレクションを手がけるかたわら、編集・執筆・企画・ディストリビューションなど、本をツールに幅広い分野で活動中。

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