


──漫画とかって読まなかったんですか?
幅:けっこう読んでいましたよ。『スラムダンク』とか『ドラゴンボール』とかも読んでたけど、大人になってから流行り出したものには距離を置いていました。でも、『ONE PIECE』は40歳のおじさんと5歳の親戚のこどもに薦められたから、騙されたと思って読んでみたの。5歳が薦めてくる本ってすごいと思いません(笑)? とりあえず1巻を読んだら面白くって。その夜タクシーで渋谷のツタヤまで行って、全部買って読みました(笑)。
李:一気読み、すごいね(笑)。
幅:うまいんだよね、尾田栄一郎がね。って……『ONE PIECE』論になっちゃってるけど(笑)。
李:幅さん、最近は何やってるの? “スーベニア フロム トーキョー”と“d-labo”のほかに。
幅:“風景としての本”みたいなのを作っています。本棚プロジェクトっていうのがあって、本棚と本をパッケージで売るの。本じゃなくて家具としてね。ジョウロで水をあげる本棚とか。石入れて、土入れて、植物を植えて……その下には“緑香る本”みたいなものを置く。
──本棚に入る本は幅さんが全部セレクトして?
幅:そうそう。本棚とセレクトした本をパッケージで売るんです。本棚のデザイナーを変えていきつつ、いろんな人といろんなものを作りたい。販売はまだ先になるけど、いまプロトタイプを作っています。問題があってね……水をあげるから排水を考えないといけないんですよ(笑)。李さんも一緒にやろうよ。
李:漫画でもいいの?
幅:いいよ。
李:巨大ジャンプみたいなのを作りたいね。巨大ジャンプみたいな本棚に『ONE PIECE』が入ってんの(笑)。
幅:ザラ紙でできた本棚みたいなのね(笑)。やりたいねえ。やりたいことだらけだね。あ、そうそう、話が戻るけど、“スーベニア フロム トーキョー”はこういうコンセプトで作っています。
李:ここでは「セレクション」っていう言葉を使っているけど、セレクトっていうレベルじゃないよね。空間全体を作るコミュニケーション、流れみたいなものを作っていくっていうことじゃないですか?
幅:そう。要はコミュニケーション、つまり人との繋がりですね。これは頑張りました(笑)。初日でかなり売り上げたみたいで、本棚に在庫がなくなっちゃうから……また行って編集し直さないと。
──本がなくなったら、アレンジし直すんですか?
幅:アレンジし直しますね。
李:売れて空間が変わっていくっていうのは楽しみだよね、お客さんからしても。
幅:どんどん売れるからまた同じものを続けるというよりは、売り切れ制。面白い企画をどんどん回していくショップになるといいですね。
李:それを続けることが出来たら、すごく魅力的な場所になるよね。
幅:珍しいものを集めるにも限界があるんだけど、そういった面白さでやっていきたいですよね。システマチックに積み重ねていくんじゃなくて、自分の気持ちをベースにやっていく……もちろんそこで責任はきちんと負わないといけませんが。たとえばアマゾンだったら「これを買った人はこれも買っています」ってシステムでパッと出ますよね。そういうことではなく、思いもよらないところから思いもよらないものがやってくる感覚です。だから『ONE PIECE』とかもためらわずに置いて(笑)、その横に海図のレターセットを置いたりね。
李:ログホース(航海用のコンパス)も置いてあるの(笑)?
幅:ログホースは置いてないけど(笑)。海図の横にジョン万次郎の漂流記があって、その横に星野道夫の本や、『WHO OWNS THE WATER』っていうLars Mullerから出てる本も置いてあったりするんだけど……その横にはやっぱり『ONE PIECE』が欠かせないでしょって(笑)。漫画とビジュアルグッズと小説が一緒に置いてある、混沌とした空間で。

update : 2007.06.19
title : 選書業・幅允孝
text : VAGANCE
photo : shinji kubo
thanks : myeong-hee lee
thanks : yoshitaka haba
thanks : BACH
幅允孝/選書業
選書・選音集団“BACH(バッハ)”代表。青山ブックセンター六本木店、建築・デザイン書のバイヤーを経て、(株)ジェイ・アイ入社。石川次郎氏に編集を学ぶ。その後独立し『BOOK246』など、書店・セレクトショップにおける本のディレクションを手がけるかたわら、編集・執筆・企画・ディストリビューションなど、本をツールに幅広い分野で活動中。
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