


中目黒の駅から歩いて約3分。とあるマンション一室のドアを開けると本の大群が目前に迫る。“TSUTAYA TOKYO ROPPONGI”や“BOOK246”など個性派書店のブックセレクションで知られる“BACH”の事務所である。前回「LEGGO」でご紹介した空間デザイナー・李明喜さんがブックトークのために訪ねたのは、ミッドタウン内“d-labo”のプロジェクトチームとしてともに仕事している選書集団“BACH”を主催する幅允孝さんだ。2人の話を聞いていると、つくづく思う。人と本との「meets」は果てしない……。
李:幅さんがディレクションしている、国立新美術館“スーベニア フロム トーキョー”はどんなスペースなんですか?
幅:企画当初は本コーナーと雑貨コーナーって分かれていましたが、結局ミクスチャー……というかごちゃごちゃ。言うなれば、手書きポップのないヴィレッジヴァンガードみたいなもので(笑)。雑貨から派生させているんですよ。たとえばバンダイから出た『宇宙戦艦ヤマト』の巨大プラモデルを置いたりとか。プラモはまさしく“東京土産”ですよね。ミュージアムショップといっても、東京でいちばん熱くて面白いものが凝縮している場所がほしかった。そうすると、アニメーションやマンガが日本発のコンテンツとしては不可欠です。で、ヤマトの脇には『沈黙の艦隊』が置いてあるっていう(笑)。
李:それはまるでヴィレッジヴァンガードのようだね(笑)。
幅:戦時中に大将だった山本五十六の自叙伝があったり、戦争を考えさせる写真集みたいなのを置いたりとか。もちろん松本零士も。ひとつのものから派生して、連動して、キレイな曼荼羅を描いていく……キレイか汚いかはわかりませんが(笑)。逆に、僕がどうしてもこの本は売りたいっていうのがあったりすると、そこからスタートすることもあります……あれ? これってなんの話するんだっけ?
李:“本のある生活”です(笑)。
幅:“本のある生活”ですか。本はね……いいよね(笑)。本って、知らない情報が何百ページにも渡って詰まっているわけですよ。それだけ膨大な情報が入っているものがバーッと並ぶ本屋って、知らないことの渦じゃない? スリリングだよね。あと、最近いいなって思うのが本のある風景です。絵的にもなんかイイ。たとえば空間のデコレーションの選択肢として、「かっこいい本棚を作って下さい」みたいなオーダーが結構あったりするわけで。
李:本棚の中身も含めて?
幅:そう。“風景として機能する本”が増えてるのかなあって思うよね。情報がパッケージされている本と、風景としての本。僕はその両方がすごく気になっています。
李:そのふたつはどこかで繋がっていると思います。“この本がある”っていうのは、単に実用とか視覚的空間としてじゃなくて、潜在的に本のある環境にその情報を感じ取るわけで、本を1冊見たらまたさらに広がるわけでしょ? 1冊に3時間分のテキストの物理的量があったとしても、そこから広がる情報は無限大でキリがない。それが確かな実感として、本のある空間のなかでは無意識に立ち上がってくる。
幅:それは確かにあるね。情報としての本というのは、マーケット的には弱まってきているんだけど。売れる本はもちろんあるんだけど、売れる本の総数は減っています。

update : 2007.06.19
title : 選書業・幅允孝
text : VAGANCE
photo : shinji kubo
thanks : myeong-hee lee
thanks : yoshitaka haba
thanks : BACH
幅允孝/選書業
選書・選音集団“BACH(バッハ)”代表。青山ブックセンター六本木店、建築・デザイン書のバイヤーを経て、(株)ジェイ・アイ入社。石川次郎氏に編集を学ぶ。その後独立し『BOOK246』など、書店・セレクトショップにおける本のディレクションを手がけるかたわら、編集・執筆・企画・ディストリビューションなど、本をツールに幅広い分野で活動中。
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