


古書店『Flying Books』は渋谷・道玄坂、それも夜はネオンが煌くとりわけ猥雑なエリアにひっそりとある。書棚はビート文学を中心に、禅思想、詩集に洋雑誌……1960年代にまつわる本で埋め尽くされている。
今回、「LEGGO」案内人である空間デザイナー・李明喜さんとブックトークを繰り広げるのは、木製カウンターの向こうでコーヒーを淹れているFlying Booksオーナー・山路和広さん。コーヒーはオーダーごとに豆を挽いているそうだ。それにしてもこの空間は居心地がいい。無垢の木材を使用した床や書棚、5.1chサラウンドから流れる耳ざわりのいいBGM、そしてコーヒーの香り。本を物色したり、コーヒーを片手にページをめくったり、訪れた人々は思い思いの時間を満喫しているようだ。雰囲気は穏やかだが、ここには何かを期待させる“空気”が漂っている。
李:珍しいですね、この床に敷かれたレール。
山路:時々、ポエトリーリーディングなどのイベントを行うのですが、本棚を端に移動させるために特別に設置してもらいました。球状のキャスターを本棚に取り付けることも考えましたが、これならひとりで気軽に動かせるから楽なんです。
李:けっこう広くなりますね。イベントはどのくらいの人数が入るんですか?
山路:20脚の丸椅子に座ってもらって、そのほかスタンディングで10、20人。40人くらいがちょうどよくて、50以上になると、ちょっと窮屈かな。これまでの最大人数は80人ですね。
李:80人? それはどんなイベントだったんですか?
山路:オリジナルのビート詩人、ゲーリー・スナイダーのシークレット・リーディングでした。
李:心配っていったら本が心配だけど(笑)。
山路:けっこうみんな、きちんとしてますよ……酔っ払ったりしてなければね(笑)。新刊書店でもそういうイベントありますけど、どうもきっちりしすぎるような気がしていて……。僕は整然としているよりも、ラフな雰囲気の中でやりたいんです。なんなら階段のほうまで溢れて座っちゃってるような。かつてビート詩人たちがやっていたような、酒場での即興ってカッコイイでしょう?
李:アメリカやヨーロッパの本屋だと、予告なしではじまるイベントってありますよね。たまたま本を物色してたら、突然みんなが座りこんでポエトリーリーディングが始まったり。それはサンフランシスコの書店でのことだったんですけど。
山路:僕は肩肘はらずに文化と触れあえる場所というのを目指していて。カウンターでお茶やお酒が飲めるスタイルを採用したのも、カジュアルな感覚で本と本のある環境を楽しんでほしいからなんです。ワインやビールを用意して、「昼からお酒飲みながら読書もいいじゃない?」って。あとは自分の飲みたいメニューばかりなんだけど(笑)。
李:十分でしょう! こういうふうにコーヒーやワインを飲んだりしながら、本を探したり読んだりできるのはいいですよね。ところで、もともとビートジェネレーションに目覚めたのはいつ頃だったんですか?
山路:学生のとき、暇だったんで大学の図書館で『エスクァイア・マガジン』のバックナンバーを読んでいたんですよ。そのなかの1冊にビート特集号があったのがきっかけですね。特にサンフランシスコにある『CITY LIHGTS BOOKS』オーナーのファーリンゲッティの言葉がかっこよくて! その頃ミクスチャーロックとかメロコア、ヒップホップを聞いていたんですが、彼の言うことはそこらへんのパンクバンドよりも刺激的だったんです。70代の、本屋で詩人のおじいちゃんの言葉がですよ。本屋は好きだったんだけど、パンク的なノリとは別ベクトルだと思っていたから打ちのめされました。![]()

update : 2007.10.01
title : Flying Books・山路和広
text : VAGANCE
photo : tsuneyoshi shiiba
thanks : myeong-hee lee
thanks : kazuhiro yamaji
thanks : Flying Books
Flying Books
(フライング・ブックス)
2003年オープン。ビート文学を中心とした古書を取り扱うほか、ポエトリーリーディングや音楽ライブといったイベントも開催する。店名は、時代や空間を超えて本の世界に飛んでいける感覚に由来している。
山路和広
Flying Books経営のほか、音楽レーベル『Fly n' Spin Records』主宰、出版やイベント企画など、活動は多岐に渡る。著書に『フライング・ブックス―本とことばと音楽の交差点』(晶文社)。
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