


長尾:その一番具体的な現れが専門図書館なんかだと思うんですよ。いま、研究者が猛烈な最先端の研究をどんどんやっている。そういう研究に対して、図書館あるいは既存の知識構造はどこまでバックアップできるかということを考えたときに、いまの専門図書館はあまり良くないんですね。
「良くない」というのは……理想の専門図書館というのは、先端研究をやっている人のためにピタッと裏側にくっついて、研究をどんどんやれるような知識サポートをするようなものでなければならないという意味においてですが。本だけでなく、ひょっとしたら実験の機械類まで考えるようなね。つまり、「こういう研究をやりたければ、世界中のここにこういう素晴らしい機械があるから、それをお使いになったらどうですか?」とかね。専門図書館っていうのは、そこまでの知識サポートを本当はやらなきゃいけないんですよ。
一般的な図書館もそういった感じで幅を広げて、社会のいろんな人の希望や欲求にどこまで応えていけるかということを考えなきゃいけないし、いま頑張れば基盤が出来るんじゃないかっていう気もするんですよね。
李:個人的な意見としては、長尾館長が在任されているあいだに国立国会図書館が変わるのでは、と思っています。「長尾ビジョン」もその一歩だと思うのですが、明らかにいままでの国立国会図書館とは動きが違うように見えます。研究者として情報科学の分野に長く携わってきた方が国立国会図書館長であることは、とても大きな意味があると思うのです。
長尾:あんまり期待されても(笑)。
李:でも本当にそう思いますし、勝手ながらとても期待しています。僕らはそういう動きに敏感に反応して、積極的にコミットしていきたいと思います。
長尾:自分が仕事をする以上はね、やっぱりロマンを持って理想を追求する姿勢というか、憧れみたいなものがないと面白くないですよね。
李:素晴らしいですね。なかなか言えない言葉です。僕なんかが言うと嘘っぽくなりますが(笑)、館長がおっしゃると自然ですね。
長尾:実際は少しずつしか出来ませんよ。だけどね、自分は究極の目標に向かって歩いているんだと確認しながら進むことは大事じゃないかなと思います。
李:本当にそう思います。最後に……今までの話からは外れますが、プライベートでお好きな本を教えていただけますか? プライベートではどういう本を読まれているのでしょう? というような話も本当はしたかったのですが、ちょっと時間がなくなっちゃったので(笑)。
長尾:哲学の本はずいぶん読んできましたし、今後とも読みたいと思っています。哲学のなかではいまの段階ではカントが一番良いと思っていますが、最近はオルテガ・イ・ガセットの『大衆の反逆』はやっぱり素晴らしい本だなと思いましたねえ。まあ哲学の本は頭の体操みたいなものですから。好きなのはやっぱりシェイクスピアかな(笑)。夏目漱石も好きですよ。『草枕』がいいですね。
李:僕は漱石では『夢十夜』が一番好きですが、『草枕』もいいですよね。よかった、接点があって(笑)。ということで、今日はお忙しいところお時間をいただきましてありがとうございました。
長尾:いえいえ、こちらこそありがとうございました。なにか問題になるような発言ばっかりしたな(笑)。

update : 2008.10.30
title : 国立国会図書館長・長尾真
text : VAGANCE
photo : shinji kubo
thanks : myeong-hee lee
thanks : makoto nagao
thanks : National Diet Library
長尾真/国立国会図書館長
1936年生まれ。1959年京都大学工学部電子工学科を卒業、1961年京都大学大学院修士課程を修了したのち、1966年京都大学にて工学博士号取得。1973年京都大学教授、1997年京都大学総長、2004年情報通信研究機構理事長を経て、2007年4月から国立国会図書館長をつとめる。研究開発業績としては、自然言語処理・画像処理、情報工学、知能情報学と多分野にわたる。それらの業績や社会貢献により、2008年10月28日、平成20年度の文化功労者に選出される。
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