POSSIEDO - フィレンツェ、帽子職人との小旅行〜レインハルド・プランク工房探訪

POSSIEDO / フィレンツェ、帽子職人との小旅行〜レインハルド・プランク工房探訪

POSSIEDO - フィレンツェ、帽子職人との小旅行〜レインハルド・プランク工房探訪

 イタリアの古都・フィレンツェの朝は、空気が澄んでいて清々しい。約束の時間かっきりに、ホテルのフロントに電話がかかって来た。急ぎ階下に行くと、車に背をもたらせ、にこやかに笑う彼の姿があった。

 「さあ、今日は1日、僕とこの車は君のもの。おおいに楽しんで」

 彼の名はレインハルド・プランク(Reinhard Plank)。フィレンツェ在住の帽子デザイナーだ。彼との出会いは数年前に遡る。彼の独特な作風と、ユニークな性格に惹かれた私は、機会ある毎に、彼と彼の作品を被写体とした。そんな交流が続き、この度フィレンツェを訪れるに際し、共に過ごす時間を持とうと二人の話がまとまった。

 『レインハルドとのフィレンツェの1日』とテーマが決まり、「レッツゴー」とアクセルを踏み込む。ふと振り返った後部座席に、大きな段ボール箱が無造作に投げ込まれている。覗いてみると、何とたくさんの帽子である。「僕の分身である帽子たちを、この小旅行に連れて行かなくてどうする?」と、彼はいたずらっぽく首をすくめた。

 フィレンツェの中心街を離れ、車は静かな郊外へと向かう。さて目的地に着くまで、いささか彼の生い立ちを紹介しよう。

フィレンツェ、帽子職人との小旅行〜Reinhard  Plank工房探訪


 チロル地方に生まれ育った後、ヴィエネ(VIENNE)に移り住み、持ち前のアート心からガラス細工の道へ進む。様々なオブジェ作りに挑戦し、炎と真剣勝負をするうち、自分の感性が次第に磨かれていくのを感じたという。そして、『立体』への興味がますます増していった。

 ふとした事から、自分の帽子を作ってみた。それをかぶって道を散歩していたところ、友人知人たちから「誰が作った帽子?」「どこで売っているの?」と尋ねられたという。それも1度や2度ではない。乞われるまま、注文に応じるようになった。その噂が人づてに広まり、知らず知らずのうちに帽子作りの道に入ってしまったというわけだ。

 とくに帽子作りの勉強をしたわけではないので、まずは木型作りに挑戦した。それが意外と難関だった。彫り直し、削り直しを何度も何度も繰り返し、ようやく意にかなった木型の原型が完成すると、思わず歓喜の声を上げたという。

 以後、ひたすら帽子作りに取り組んだ。始めから終わりまで、作業工程に携わるのはすべてひとり。1年間に500個もの帽子を作り上げた。指が腫れ上がった事もしばしばだったと、大きな両手を広げてみせた。

 丹誠こめて生み出した帽子は、彼にとってどれも等しく愛おしい。分身のように思えるわけが理解できる。以来、彼は帽子の型を何よりも大切に思い、元祖オリジナルの型はスタジオの棚の上に鎮座している。「どんなに忙しくても、手抜きなんて絶対できない。元祖の型が自分を見ているから」と、肩をすくめた。Next

フィレンツェ、帽子職人との小旅行〜Reinhard  Plank工房探訪

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update : 2008.04.15
title : Reinhard Plank


text : tomoko oka
photo : tomoko oka
thanks : reinhard plank

フィレンツェ、帽子職人との小旅行〜Reinhard  Plank工房探訪

レインハルド・プランク

1970年、オーストリア・チロル地方に生まれ育ち、工業デザインを学ぶ。“形”にこだわるようになり、ガラス工芸家を志したのち帽子作りに傾倒。2005年より実弟とともに帽子ブランド『Reinhard Plank』を設立する。イタリア、フランスやドイツ、オーストリアなどヨーロッパはもちろん、カナダや日本でもビジネスを展開。日本ではBEAMSやユナイテッドアローズなど多くのセレクトショップにて取扱い中。


丘ともこ

ファッション・フォトジャーナリスト。カメラのレンズを通し、ファッションスタイル、ファッションビジネス、ライフスタイルなどを社会現象のひとつとして捉え、海外の情報を国内に紹介するとともに、日本及び諸外国の情報を海外メディアで紹介している。


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